エンジェル・レポート(141) ~あのキレイなお月さまを見てみろ~
熱中症防止のため午前と夕方の二部制となった夏の高校野球大会。
1回戦第4試合で出場したのは、滋賀県代表綾羽高校。
同校は甲子園初出場。対する相手は強豪高知中央高校でした。
綾羽高校は3-4で1点を追いかける展開。
これまでにも再三チャンスはあったものの、この1点になかなか手が届きませんでした。
時刻はすでに午後10時を過ぎていました。
最終回の9回表。千代純平監督は選手全員を集め、叱咤激励するのではなく、
空を見上げながらこう語りかけました。
「あのキレイなお月さまを見てみろ。こんな時間に甲子園で野球ができるなんて、幸せだと思わないか。
すごい経験だぞ。甲子園で野球しながら月を見られることは“ツキ”があるということだ」
下位打線で厳しい状況には変わりありません。
でも監督の一言で選手たちの表情からは悲壮感が消え去り、笑顔が見られるようになりました。
一人ひとりが、懸命に粘ります。
そしてついに土壇場で同点に追いつきました。
延長戦の10回からはタイブレーク方式となり、ノーアウトランナー1,2塁の状況で始まります。
綾羽高校は上位打線につなぎ一挙4点を挙げて勝ち越し、満月の甲子園で逆転初勝利を収めました。
試合終了は、午後10時46分。
高校野球史上最も遅いゲームとなりました。
また、試合後には珍しい光景がありました。
試合終了直後に両チームが整列し、綾羽の浜野選手がボールを球審に返そうとすると、
球審から「そのまま持っておきなさい」と言われたそうです。
甲子園初出場、初勝利のウイニングボールは、彼らの汗の結晶として、母校の宝として、
持ち帰られることになりました。
さて、建設現場と甲子園はもちろん別物ですが共通点もあります。
建設現場には、一発逆転もスタンドの応援もありません。
でも、エラーは存在します。
ちょっとした気の緩みから、怪我をすることもあるでしょう。
手順や寸法を間違って工程が大きく遅れることもあります。
血がにじむような練習をしてきた高校球児と同様、どれだけ頑張ってもエラーを100%
なくすことは不可能です。
しかも、建設現場のエラーは、取り返しのつかない事態を招くこともあります。
だからこそ、不注意や省略行為、危険軽視といったエラーの芽を摘み取ることを意識して欲しいのです。
焦りやイライラ、トラブルが続いて落ち込んだときには、気を落ち着けてください。
夜空の月は見えなくても、深呼吸をして気分を整えることはできるはずです。
小さなエラーが発生しても、リカバリーや再発防止を行い、全員でフォローすればいいんです。
工事の完成こそが、僕たちの誇るべきウイニングボールなのです。

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