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エンジェルレポート64 ~昼間の父ちゃん~

 

 

先日、偶然あるテレビ番組を見ました。

 

その番組の主役は「おとうさん」でした。

 

普段家では、子どもと遊んでいるだけで、何でもお母さんに頼っているお父さん。

思春期を迎えた中学生の娘からは、「お父さんの存在は友達でも、父でもない」とバカにされていました。番組は、お父さんの仕事を取材するという名目で職場にカメラが入り、それをこっそり家族が見るというものでした。

 

そんなお父さんの職場は建設現場。石膏ボードや材料を運搬する「荷揚げ屋」です。

 

1枚18kgの石膏ボードを一度に4枚担ぎ、何百枚というボードをマンションの各戸に運び込んできちんと置いていく。それが終われば、休む暇もなくスクーターで近くの現場に異動して、今度は戸建て住宅の90kgにおよぶ大きな梁材を担いで細い路地を歩いていく。材料が足場や柱にぶつからないように周囲に気を付けながら狭い通路を縫うように運ぶ。その繰り返しを1日中、毎日毎日やっているのです。運び終えたら、廊下に落ちた石膏ボードの粉をきれいにふき取ることも忘れません。「荷揚げ屋」さんにもプロ魂があるのです。

 

その姿を、車の中で、モニターで見ていた子どもたちの目が、どんどん真剣になっていきました。最初は笑っていた子どもたちの言葉が少なくなり、「重そう、スゴイね」とポツリポツリつぶやきます。中学生のお姉ちゃんの目には、うっすら涙が浮かんでいました。

 

お父さんの前職は長距離トラックの運転手でした。荷揚げ屋になった理由は、子どもたちとの時間を増やしたかったから。自分で日程を調整できる荷揚げ屋に転職し、学校行事などにも行ってあげたいからという理由だそうです。この仕事は、決して楽な仕事ではありません。誰もができるようなことではない厳しい仕事です。そんなこととは何も知らずに、帰宅して疲れているお父さんにじゃれる小学生の男の子、お父さんはだらしないとバカにするお姉ちゃん

 

そんな子どもたちが、お父さんの働いているときの真剣な姿を見て、心ふるわされていました。

 

その夜、自宅では、お父さんの日ごろの頑張りをねぎらって、家族で焼き肉を食べていました。おいしそうに肉をほおばりビールを飲むお父さんに向かって、中学生のお姉ちゃんが「今日だけ、ビールもう一本飲んでいいよ」と。その眼には、お父さんへの尊敬と愛情がしっかりと宿っていました。

 

やっぱり昼間の父ちゃんは、カッコいいですね。